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【ブンブン小説】魔法のワンワードゴルフ —たった一言で5打縮む奇跡の物語—

2025.04.14 UP

魔法のワンワードゴルフ
—たった一言で5打縮む奇跡の物語—

プロローグ:雨の練習場
梅雨の雨が冷たく降りしきる夕方。
城島信也は、ゴルフバッグを肩にかけたまま、練習場の入り口で足を止めた。

ガラス窓の向こうでは、数人のゴルファーが黙々とボールを打っている。

外の雨は激しさを増していて、傘を差しても靴まで濡れてしまうほどだ。

「どうせ今日のコンペは中止か……」

自分で予約したゴルフ場。
そのコンペが雨で中止となったことに、どこか責任を感じている自分がいた。

部下たちの前で何とも言えない気まずさ。
上司として、みんなのためにと企画したのに、うまくいかなかった。

城島は小さく溜息をつき、ドアを押した。

「いらっしゃいませ」

フロントの若い女性が笑顔で迎えてくれる。
城島は会員カードを差し出しながら、ぽつりと呟いた。

「100球、お願いします」

最近のゴルフは、まるで自分の人生の縮図のようだった。

ずっと100を切れないスコア。
会社では出世レースから外れ、毎日同じ仕事の繰り返し。

何をやっても中途半端。
突き抜けられない。
そんな自分が、いつもそこにいた。

2階の打席へと上がり、空いている席に腰を下ろす。

機械的にクラブを取り出し、軽くストレッチを始めた。

ゴルフ歴はもう15年以上。
ゴルフ雑誌は何冊も読んだ。レッスンも受けた。YouTube動画も見漁った。

でも……
頭では分かっていても、体がついてこない。

「どうせ今日も同じか……」

つぶやきながら、7番アイアンを手に取り、ボールをセットする。

スイング。
ボールは右に大きくスライスし、モニターの右端に白い弾道を描いて消えた。

「あー……またか」

隣の打席から、心地よい音が響いた。

ふと視線を向けると、白髪の老人がアイアンを握っていた。
70代半ばだろうか。

背は低く、少し猫背気味。
でもそのスイングは、驚くほど滑らかで自然だった。

放たれたボールはまっすぐ飛び、モニターの目標地点にぴたりと止まる。

「すごいスイングですね」

思わず声をかけていた。
老人はゆっくりとこちらを向き、穏やかな笑顔を見せた。

「ありがとう。でもね、スイングなんて実はどうでもいいんだよ」

城島は思わず眉をひそめた。

「どうでもいい……ですか?」

「そうさ。ゴルフはみんな、複雑に考えすぎなんだ」

老人はアイアンを置き、ゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。

「失礼だが、君のスコアはどのくらいかな?」

「最近は……101とか102ですかね」

城島は少し恥ずかしそうに答えた。

「どうしても100が切れなくて……」

「ふむ……」

老人は腕を組み、しばらく考えるような素振りを見せた。

「私は瀬戸という。もしよければ、ちょっとしたことを教えてあげようか?」

城島は少し戸惑った。
この年配の方から何を教わるのだろう。

でも……
その眼差しには、どこか惹かれるものがあった。

「ぜひお願いします」

瀬戸はにこりと微笑み、ひとことだけ言った。

「ワンワード」

「ワンワード……?」

「そう。たった一言。その一言で、ゴルフは変わるんだよ」

「難しい理論も、長時間の練習もいらない。
場面ごとに、たった一つの言葉を心に留めるだけでいい」

城島はますます不思議そうな顔になった。

「そんな簡単なことで、ゴルフが変わるんですか?」

「簡単だからこそ、効くんだよ」

瀬戸は城島のクラブを手に取りながら続けた。

「人間の脳はね、一度に一つのことしか集中できない。
だから、一言だけに集中するのがいちばん効果的なんだ」

「でも……スイングとか、グリップとか、他にも……」

「それが問題なんだ」

瀬戸はやさしく笑って言った。

「考えすぎて、体が動かなくなってる。
頭の中が複雑すぎて、体が混乱してるんだよ」

城島は言葉に詰まった。
図星だった。

レッスン本や動画の言葉たちは多すぎて、
コースに出ると何ひとつ実践できなかった。

「……で、そのワンワードって、何なんですか?」

瀬戸は城島のゴルフバッグに視線を落とし、こう聞いた。

「君がいちばん悩んでいるのは、どこかな?」

「アプローチですね……
グリーン周りでミスして、スコアが崩れるんです」

「なるほど」

瀬戸はコクリと頷いた。

「では、君のワンワードは——」

**「パター優先」**だ。

「パター優先……?」

「そう。グリーン周りからは、まずパターを使うことを最優先に考える。
難しいアプローチより、パターで転がす方がずっと確実なんだよ」

「でも……フリンジとか、ちょっと深めのラフとか……
そこはさすがにパターじゃ無理なんじゃ……」

「ほんとうにそうかな?」

瀬戸は微笑んだ。

「試してごらん。明日、同じような場面で、必ずパターを使ってみなさい。
そして、またここで結果を教えてくれ」

城島はまだ半信半疑だったが……
なぜか、この不思議な老人の言葉には妙な説得力があった。

「わかりました。やってみます」

「いい返事だ」

瀬戸は嬉しそうに頷いた。

「それから、もうひとつだけ覚えておいてほしい」

「ゴルフは人生の縮図なんだよ。
『パター優先』はね、グリーン周りだけじゃない。
君の仕事にも、人間関係にも効くかもしれない」

「それって、どういう意味ですか?」

「複雑な解決より、シンプルな選択肢を優先する——それだけさ」

瀬戸はそう言って、自分の打席に戻っていった。

城島はその後の球を打ちながら、
「パター優先」という言葉を何度も反芻していた。

その一言は、驚くほど静かに、
しかし確かに——
彼の心に入り込んできていた。

第1章:アプローチ編「パター優先の一言」
翌日、急遽決まった代替コンペ。
城島は瀬戸の言葉「パター優先」を心に刻みながら、グリーン周りに立っていた。

打ち上げの残る少し難しいライ。
いつもなら迷いなくサンドウェッジを手にする場面だが、城島はパターを選んだ。

「城島さん、そんなところからパターですか?」

同僚が驚いた声を上げたが、城島は静かに構えた。

ボールはコロコロと転がり、グリーンに乗ってカップのすぐ手前で止まった。

「すごい!」

「アプローチだったら、絶対オーバーしてましたよ!」

心の中で、瀬戸の声が聞こえた気がした。

「シンプルに考えればいい」

その日、城島はいつもより冷静にラウンドできていた。
結果、初のスコア98を達成。

「たった一言で、本当に変わるんだ……」

雨上がりの夕方。
城島は再び練習場を訪れた。

あの老人にもう一度会いたかった。
フロントで名前を尋ねるが……

「瀬戸さんという会員様は……いませんね」

「えっ?昨日この時間に来られていたと思うんですが……」

「昨日のこの時間帯にいたのは、お客様お一人だけです」

城島は言葉を失った。

しかし、ふと目をやると、フロントのカウンターに古びた本が置かれていた。

『ワンワードゴルフ』

そのタイトルに、思わず手が伸びた。
最初のページには、丁寧な筆致でこう記されていた。

「次のワードは『距離感は気合い』。
パッティングで迷ったら、これを思い出しなさい。
——瀬戸」

城島は静かにその本を胸に抱いた。
ワンワードの旅は、まだ始まったばかりだった。

第2章:パッティング編「距離感は気合いの一言」
会社でも、少しずつ風向きが変わり始めていた。

先日のゴルフコンペでの好成績、
そして「パター優先」のワンワードをヒントにまとめた企画書は、社長からも取引先からも高評価。

だが、城島の心はどこかモヤモヤしていた。

「……まだ何かが足りない」

スコアカードを見返すと、3パットが5回。
パターの合計打数は40を超えていた。

「もし3パットを減らせたら、90切れるかもしれないのに……」

その夜、城島は再び『ワンワードゴルフ』のページをめくった。

そこにはこう書かれていた。

「パッティングの最大の敵は、距離感の欠如である」

「距離感に必要なのは、気合いだけだ」

「気合い……?」

技術的なアドバイスではないその一言に、最初は戸惑った。

だが読み進めるうちに、瀬戸の意図が見えてきた。

「ラインを読むことに夢中になるゴルファーは多い。
しかし、ラインが完璧でも、距離が合わなければ入らない。
逆に、距離が合えば、多少ラインがズレても2パットで済む」

「パットの前に**『距離を合わせるぞ!』**と強く念じてごらん。
それだけで、君の距離感は変わる」

翌日——

城島は緊張感のある商談の場にいた。
相手は大手取引先の高橋商事。

「弊社の提案をご説明いたします」

資料を手に説明を始めるも、相手の反応はいまいち。

「……何かが足りない」

その瞬間、頭に浮かんだのはあのワンワード。

「距離感は気合い」

城島は深く息を吸い、
「この提案、絶対に伝える!」と心に気合いを入れ直した。

すると、不思議なことに言葉が流れるように出てきた。
声に熱がこもり、相手の目が徐々に変わっていく。

商談は予定を超えて盛り上がり、最終的には前向きな返答を得ることができた。

「城島さん、今日のプレゼン……すごく良かったよ」

部長が帰り際にそう言った。

城島は小さく笑いながら答えた。

「気合い、入れてみたんです」

そして週末、またゴルフ場。

今日こそ90を切る!と意気込み、コースに立った。

前半は順調。
「パター優先」を忘れず、落ち着いてプレーを重ねる。

しかし、後半に入り再び3パットが出始めた。

迎えた13番ホール。
長い上りのパット。

「ここで3パットしたら……90切りは遠のく」

そのとき、あの言葉がよみがえった。

「距離感は気合い」

城島はカップを見つめ、
心の中で強く念じた。

「距離を合わせるぞ!」

打ったパットは、まるで吸い込まれるように
カップのすぐ横、30センチでピタリと止まった。

「すごいパットだったね!」

同伴者が声をかけてくる。

そこから先、すべてのパットの前に「気合い」を込めた。

そしてついに——
スコアは89!

初の90切り達成。

ラウンドを終えて、クラブハウスを出ると、
駐車場の奥に、白髪の老人の姿が見えた。

「瀬戸さん!」

彼は振り返り、優しく微笑んだ。

「どうだった?」

「『距離感は気合い』、効きました。初めて90を切れました!」

瀬戸は満足そうに頷いた。

「気合いというのは、ただの勢いじゃない。
集中と決意と情熱、それが合わさったものだよ。
ゴルフでも、人生でも、それがいちばん大事な場面で力になる」

「仕事でも、まさにそれを感じました」

瀬戸は城島の肩を軽く叩いた。

「次のワンワードはね——」

『誰も見ていない』だ。

「えっ……?」

「次のラウンドで試してごらん。
プレッシャーを感じたら、心の中でこの言葉を唱えるんだ」

その瞬間、同僚の車が城島の方に走ってきた。
振り返って再び瀬戸を見ると——もう姿はなかった。

車に乗ろうとしたとき、フロントガラスに一枚の紙が挟まれていた。

そこには、あの達筆な文字でこう書かれていた。

「『誰も見ていない』——プレッシャーは、自分で作るものだ。
——瀬戸」

城島はその紙を大切にポケットへしまった。

ワンワードの旅は、まだまだ続いていく——

続章「誰も見ていない」編に、つづく。